Another story of "Heart"

もう1つの"Heart"のStory


私、Koozyにとって第1弾の写真詞集展 "Heart" は、2010年3月20~24日の5日間、東京・池袋にある「ORANGE GALLARY(オレンジギャラリー)」にて、開催されました。


写真と作詞を合わせた私の作品のスタイルは、多くの方々にとって、
なかなか目にしないモノでしょうし、初の個展でもあったため、観て
いただいた方にどのくらい受け入れられるか、全く未知数の部分が
ありました。


しかしフタを開けてみると、150名近くの方にご来場いただき、私の
当初の想像を遥かにしのぐ、素晴らしい感想や反応をいただく事が
できました。


特に作品を観て、涙を流される方を目の当たりにした時や、
「本当に今日ここに来て良かった」などと言ったご意見を
いただいた時、私自身も同じく胸にこみ上げてくるものが
ありました。


また、私の多くの友人たちに色々とお手伝いやサポートをして
いただき、この個展は多くの人々の深い愛情とご厚意と共に、
作られたものでもありました。


しかし、そんなこの個展も、最初からすんなりと開催できた訳では
ありません。


実はこの写真詞集展"Heart"は、今から7年前になりますが、当初2003年に開催計画がありました。


当時私は駆け出しのフォトグラファーでしたが、色々と苦労の末、
いくつか自分の仕事を抱える事ができ、何とかフォトグラファー
として食べていけそうな状態にまでなれました。


「そろそろ個展もやろうかな」とも考えていました。


・・・しかしそんな矢先、私は、生命にも関わりかねない大きな
交通事故(バイク事故)に遭い、大怪我を負う事となります。


特に左腕に負った怪我は重く、若干麻痺のような症状もあり、
1年近く満足に動かせず、治るまでに数年を要しました。
怪我からしばらくの間は、当然カメラを持つ事もできない状態
でした。


駆け出しの立場の人間にとって、それは競争と入れ替わりの激しい
フォトグラファーの世界では「死」を意味するようなものです。


結局この怪我は、私からフォトグラファーとしての仕事を奪い、
私をフォトグラファーとしての職から退かせる事となりました。


「もうカメラを持つ事もないだろう」


当時、私は心身共に最悪の状態で、写真の世界とも一旦は完全に決別
しました。

そしていつしか写真詞集展の開催も、幻のものとなってしまいます。



この後、私は別のいくつかの世界で紆余曲折しながら生きる事と
なりますが、運命とは不思議な物で、交通事故から6年後の2009年、
1つの巡り合わせが待っています。




現在の私は、心理カウンセリング・セラピーを専門としている立場でもありますが、2009年、当時私が学んでいたヒプノセラピーの
スクールで、技術研修を兼ねて、グリーフセラピー(悲嘆療法)
と言う療法を自ら体験してみた時の事です。


その中で私は、昔、私の親友のノリちゃんと交わした、ある約束を
思い出す事になります。
もうすっかり忘れかけていた約束ですが、その約束こそ


「写真詞集展"Heart"を開催する事」でした。




・・・実はノリちゃんは、今はもうこの世にはいません。



彼女は2003年に27歳の若さで、乳ガンで亡くなってしまいました。



ちなみにグリーフセラピーとは、にわかには信じられないかも知れませんが、セラピーのセッションを通じて、身近で亡くなった大切な人と対話をしていきます。
そしてその対話を通じて、心の傷を軽減させたり、癒しを得ていく
療法です。


私は彼女が亡くなる直前、病状がそこまで進行しているとは、全く
聞かされていませんでした。
彼女が亡くなった知らせを聞いた時、病状を知らなかった事に
対して、彼女に申し訳ない気持ちになって、もし謝れるものなら
謝りたいと、ずっと思っていました。


そして、私はこのグリーフセラピーの中で、6年ぶりにノリちゃんと対話する事ができ、彼女にこの事を謝りました。


しかし、彼女はそんな事は全く気にせず、私にただ、


「まだ、やるべき事をやっていないよね」


と言います。



その後、私の脳裏に描かれたのは、私が個展を行っている映像です。


それで、私は全てを察しました。



この時、彼女は天国に旅立ってから、もう6年もの月日が経っていましたが、それでも私の心の奥底に眠っていたこの大切な約束を、思い出させてくれました。



この直後、私はノリちゃんとの約束を今からでも果たそうと思い、
また過去に置き忘れた宿題を清算するために、もう1度、写真の
世界での復活を決意しました。



ちなみにフォトグラファーの職を退いた後、1~2年くらいはカメラを持つことはほとんどありませんでしたし、写真の仕事をやる事も、
ほぼありませんでした。


・・・しかし実は、ほんの少しずつですが、作品制作だけは行って
いました。



そして、当初の計画より7年も遅れてしまいましたが、2010年3月、
写真詞集展"Heart"は開催される事となりました。



開催が7年も遅れてしまったのは、決して良い事ではないのかも
知れません。


でも、7年という長い熟成期間があったからこそ、当初の2003年の
計画の頃よりも、作品に深みが出て、愛情のこもった個展に
仕上げる事ができたのも事実です。


そう考えたら、この遠回りは必要だったのかも知れません。


また、今回の個展が決まって以降、作品制作から個展開催中の間、
ずっと、自分以外の大きな何かの力が、私を後押ししてくれるのを
いつも感じていました。


応援して下さった多くの皆さまのパワーも勿論あったと思いますが、
ノリちゃんもそっと私の背中を押してくれていたのかなと思います。


余談ですが、この個展開催のキッカケともなった、ヒプノセラピーの
スクールの先生(私の師匠)も個展に来て下さりました。


当然、今回の個展開催までの経緯はご存知ですが、会場で先生に、


「彼女にいい報告はできた?」


と言われて、思わず涙がこぼれそうになりました。




「・・・ノリ子、ありがとな。見えてるか。今のこの光景を。」


勿論、彼女にも、個展が実現させられた事の報告をさせて
いただきました。


彼女の元に、きっと届いている事を信じて・・・。


世の中、良い事もあれば、悪い事もあります。悪い事が起こった時、私たちはどうしても、ネガティブな気持ちや、ひねくれた気持ちにもなります。


でも、その出来事が本当に自分にとって、悪い事なのかどうかは、
長い目で見れば分からないモノです。


私も2003年の交通事故で、大きく人生が変わる事となりました。
そこで、大きな挫折も味わいましたし、その後も様々な失敗や苦難も
味わってきました。


でも長い時間を経て、今振り返ると、やっぱり自分にとって、必要な経験だったんだと思います。


それがなければ、今の自分には絶対になれていませんし、何よりこの写真詞集展”Heart”は、存在していませんから・・・。


現在、どんなヒドイ状況や、ツライ状況にある方でも、絶対に自分
自身の事や、自分の存在だけは信じ続けて欲しい。


そして、絶対に希望の光は捨てないで欲しい。


必ず雨は止む時はくるし、絶対に止まない雨はないから。


そして、必ず未来は変えられるから。



写真詞集展”Heart”の裏テーマは、「桜」です。
桜と言えば、「別れ」と「出会い」の象徴。
そして「希望」の象徴でもあります。


桜の象徴とも言えるこの「希望」を、最後の言葉として、締めくくりたいと思います。


また新たな作品と共に、必ず皆さまの元に帰ってきますので、
しばらくの間、お待ちください。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。



2010年4月吉日
Koozy






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